白癬(水虫)とは
白癬(はくせん)とは、真菌(カビ)の一種である白癬菌が感染することで発症します。
以前は、白癬菌は土壌の中で生息していましたが、進化に伴って人間の皮膚の角質層に含まれるケラチンを栄養源として増殖するようになりました。人に宿る白癬菌は数十種類もあり、日本では5~6種類が確認されています。
足に感染することが多く、足に白癬が起こった場合は「水虫(足白癬)」と呼ばれます。
その他にも頭部や手、爪、股などにも感染します。
白癬(水虫)は医療機関にて治療を受けることで治せる疾患です。
発症したらそのままにせず、早めに当院までご相談ください。
白癬(水虫の症状)
足・手白癬
足や手に白癬が起こった状態で、指の間に赤みが現れたり、小水疱が生じたりします。
また、かかとの皮膚が厚く硬くガサガサになり、皮がむけてしまうこともあります。
爪白癬
爪に白癬が起こった状態で、爪の厚みが増したり、白く濁ったりします。
体部白癬
(ぜにたむし)・
股部白癬
(いんきんたむし)
俗に「いんきんたむし」と呼ばれる状態で、股に発疹ができてかゆみを伴います。発疹は環状に広がっていきます。悪化すると肛門周辺まで発疹が広がります。
頭部白癬(しらくも)
頭部で白癬が起こった状態で、楕円形に脱毛が見られます。
白癬菌が皮膚深部まで感染すると、脱毛した毛は生えてきません。
白癬(水虫)の原因
風邪やインフルエンザなどのウイルス性疾患は、会社や電車などの人が集中している場所ではうつってしまうことがありますが、白癬は発症している人と直接触れても、すぐにうつるわけではありません。
白癬は、白癬菌が皮膚に侵入して長期間潜伏することで発症し、白癬菌が体外に出てくることはありません。ただし、長時間靴を履く、激しいスポーツをするなど、高温多湿な環境に感染した皮膚がさらされると、菌が増殖して様々な症状が現れます。
爪白癬の原因
爪白癬は、白癬菌が爪の中に侵入することで発症するもので、足に感染した菌が足の爪に移動することで発症するケースが多いです。
白癬菌は皮膚の角質層に含まれるケラチンを栄養源として繁殖しますが、爪はケラチンを豊富に含んでいるため、繁殖しやすいです。
さらに、足は靴や靴下を履くため、白癬菌にとって好ましい高温多湿な環境になり、繁殖しやすくなっています。
白癬は、白癬菌に感染した動物や人に直接触れたり、剥がれ落ちた角質に触れたりすることでうつります。
爪白癬では、足の皮膚に感染した白癬菌が爪まで移動して感染したり、手で触れた際に爪の中に侵入したりすることでうつります。
足の指は手の指より太く、指同士が接触しやすいことから感染が広がっていくことが多いです。
白癬(水虫)の治療方法
薬物療法
白癬の治療では抗真菌薬(外用薬)と内服薬による薬物療法が行われます。外用薬は症状や感染した部位に応じた適切なものが処方され、足の場合は1日1回、それ以外の場合は1日1~2回塗るようにしてください。
塗布するタイミングも重要で、入浴後が一番効果的ですが、就寝前でも大丈夫です。足に塗布する場合は、朝靴下を履く前に塗布するのもお勧めです。
完治するまでは使用を継続し、しっかり全体に塗るようにしましょう。足白癬の場合は両足全体に、体部や顔に白癬が生じた場合は、皮疹が現れている範囲より1~2cm広く塗るようにしてください。白癬菌は真菌(カビ)の仲間なので、症状が現れている部分よりも菌が広がっていることもあります。
感染した部位や範囲次第ではありますが、外用薬を使用し始めてから2週間ほどで症状が治まったかのように見えることがよくあります。しかし、これは表面上の症状が治まっただけで、白癬菌は角質深層でまだ生きており、完治はしていません。皮膚はターンオーバーと呼ばれる細胞が新しく入れ替わるサイクルがあり、約1ヶ月の周期となっています。白癬が完治するまでにはこのターンオーバーが数回必要とされています。
足白癬の場合は3~6ヶ月、体部や顔の白癬の場合は2~3ヶ月要します。この期間中は医師の指示に従って外用するようにしてください。
なお、爪白癬に対しては他の部位に使用する外用薬では治療が難しく、専用の外用薬が開発されています。内服薬に比べ副作用が少ないというメリットはあるものの、効果は低いです。爪白癬は内服治療でも完治する確率は60%程度で、爪白癬になる前段階のうちから外用薬で治療することが重要です。
内服薬
外用薬では効果が不十分だった場合、内服薬による治療が行われます。内服薬は、外用薬の成分が届きにくい角化型白癬にも有効です。また、頭髪や髭などの毛髪部分は外用薬では十分な効果が見込めないため、内服薬による治療を行います。
内服薬は稀ではありますが副作用があり、貧血や肝機能障害が起こる可能性があります。そのため、内服期間中は、副作用を確認するために定期的な血液検査が必要です。
また、他のお薬と相性が悪い内服薬もあり、内服期間中は休薬して頂くこともあります。
内服薬での治療も完治までには3ヶ月~半年要するため、途中でやめずに続けることが重要です。
爪白癬の治療方法
外用薬
(クレナフィン®爪外用液、
ルコナック®爪外用液)
爪は硬く頑丈なので、足白癬などに使用する外用薬では十分な効果が望めません。そのため、高濃度な爪に成分が行き届く爪白癬専用の外用薬が処方されます。これは爪白癬の症状が軽度なものであれば効果が見込め、内服薬のように全身的な副作用もありません。なお、爪の周りがかぶれることはあります。爪は約半年~1年間で生え変わるので、その間は毎日1回塗布するようにしてください。
内服薬
現在、日本で処方されている内服タイプの抗真菌薬は、ホスラブコナゾール(ネイリン®)、テルビナフィン(ラミシール®)、イトラコナゾール(イトリゾール®)の3つです。特に、効果が高いものはホスラブコナゾールです。テルビナフィンは価格が安いものの、内服期間が半年~1年と長くなります。基本的にはこの2種類で対応しますが、体に合わなかったり、効果が見られなかったりする場合は、イトラコナゾールの使用を検討します。
これらの内服薬はいずれも、胃腸障害や肝機能障害が副作用として現れることがあります。そのため、肝機能が悪い方には処方できません。また、内服期間中は、副作用を確認するために定期的な血液検査が必要になります。一部の胃薬や睡眠薬、抗アレルギー薬、コレステロールを下げるお薬などは相性が良くないことがあるので、事前に医師に服用中のお薬をお伝えください。
白癬(水虫)の予防方法
白癬は、日本人の約10%の方が発症しているようなよくある疾患です。
予防法としては、皮膚を清潔に保つことが大切です。
お風呂では足の指と指の間をしっかり洗うようにしましょう。家庭内で共有しているタオルやバスマットはこまめに洗濯し、天日干しをしましょう。また、靴やスリッパもこまめに天日干しすることが効果的です。足に触れるカーペットや畳などの洗濯できないものについては、濡れた雑巾で拭いたり、洗濯機を掛けたりした後、乾燥させるようにしてください。
爪白癬の予防方法
爪白癬は多くの場合、足に感染した白癬菌が移動してくることで発症するため、足白癬を予防することが爪白癬の予防になります。
原因菌の多くは、温泉やプールなどの床や共有のスリッパに素足で触れることにより感染します。
そのため、足を清潔に保つためにお風呂でしっかり洗うようにし、原因菌の繁殖を抑えるために蒸れないように気を付けましょう。
長時間靴を履くことが多い場合、靴や靴下は通気性の良い物を選ぶことが有効です。
バスマットやタオル、スリッパの共有は控え、床もこまめに掃除しましょう。
また、感染した足を自身で触ってしまうことにより、手の爪に菌が入り込んでしまうことがよくあります。
皮膚がガサガサになったりかゆくなったりして気になりますが、触らずに医師に相談しましょう。